"思い出の音楽"カテゴリーの記事一覧
-
キミは世間の常識から考えて、オレが「キー・オブ・ライフ」ではなく、セールス的には大敗北だった「シークレットライフ」をスティービーの最高傑作だと言うことに疑問があるかもしれない。それに「シークレットライフ」はスティービー名義の公式アルバムではないじゃないかという反論もあるだろう。
たしかにこのアルバムはある科学映画のサントラとしてリリースされたものだ。だがいつも「また聴きたい」と思ってしまうスティービーのアルバムは、オレにとってはシークレットライフ以外にはないのだった。
なかでもこのアルバム収録曲の「愛を贈れば」(Send one your love)は忘れられない。
79年の冬、オレは大学浪人生だった。時間が深夜0時を過ぎれば12月25日、クリスマスじゃないか。オレはクリスマスイヴの深夜にいったい何をやってるんだ。ラジオを聴きながら、受験勉強かよ。なんか惨めだなあ。あ、時報が鳴った。ラジオのパーソナリティーが曲を紹介する。「では、スティービー・ワンダーで『愛を贈れば』・・・・・」
初めて聴くスティービーの新曲だった。オレはクリスマスの日にとても幸せな気持ちになったのだった。
今度はアナタが幸せな気持ちになってください。
このアルバムにはスティービーのボーカルではないけれど、名曲がもう一曲ある。やさしい女性ヴォイスで歌われる、これも隠れた名曲「Power Flower」である。
オレは、「実はどうなの?」とたずねれば、「スティービーのアルバムの中で『シークレットライフ』が一番好きだ」と答える者が実はたくさんいると思っている。だって売れた枚数がアルバムの価値を決めるわけではないのは、いまさら言うまでもないことだし、「また聴きたくなるアルバムこそ名盤」なのは「また見たくなる映画が名作」であるのと同じことだよね。 ということで、「思い出の音楽」スティービー・ワンダー編はこれで終わりにする。PR -
書かないときは、一月に記事一本とか、ほんと数が少ないんだけど、やっぱ生活のためにやらなくちゃいけないことが多くて、あれこれやるためには、またあれこれ気を回して考えたりすることも多いわけで、あっという間に時間だけが過ぎていき、気がつくと「あれ、今月も記事一本しか書く気力がなかったの」って気がつかされることの繰り返し。次回はもっとたくさん記事を出そうと思っても、やっぱり記事一本が限界だったりする。でもも少し多くかけるように今後は努力したい。ということでひさびさ音楽ネタで一本。
音楽の新譜を追いかける気力も失せてる2012年のオレだった。というかオレが追いかけていられたのは90年代の音楽までで、2000年代以降、日本の音楽にも海外(おもに英米だけど)にも、ほとんど何も----もしかしたら、今まで聴いたこともない衝撃でトリハダ体験をさせてくれる音楽を聴かせてくれるかもというような----期待をしなくなっている。だから最近のミュージシャンとか誰も知らん。レディーガガとかも一度も聴いたことがない。名前を知っているのはニュースで名前を聴く機会が多かったからだ。
中学時代は70年代の前半から始まったが、親に買ってもらったラジカセは、オレの世界を変えてしまった。70年代の田舎はまだたくさんの空き地が点在し、ひどい造作の長屋もいっぱいあった。そんな時代。デパートに出掛けた暑い夏の午後のことだった。、デパートの駐車場に----そこはもちろん70年代の初期だから、舗装なんてされてない土と石ころだらけの「デパートの駐車場」だった----暑さをしのぐために両方のドアが開けられた軽トラのAMラジオから、中学1年生の丸坊主頭のオレに衝撃を与える音楽が流れてきた。スティービー・ワンダーの「迷信」だった。ギラギラする天気のもとで、軽トラの開いたドアに隠れたラジオから聴いたこともない音楽が流れてくる。それに衝撃を受けるガキンチョがそこにいたわけだ。
当時そんな経験をしたニッポンの中学生や高校生はオレだけじゃないはず。今くたびれたオッサンになってる連中のなかに「迷信」を初めてラジオで聴いた瞬間に気が狂いそうになった経験をした者、すくなくともトリハダ体験をした者はこの日本だけに限っても大勢いる。そしてそういった中坊や高校生たちが、「新しい音楽」を聴くたんびに、毛穴がゾワっとする経験を何度もしてきたのだった。当時のラジオは宝の箱だった。
現在のポピュラー音楽の原型はほぼ80年代初期までに出揃ってしまい、何の改新もなされないまま、再生機器の改新やシンセ楽器や録音技術の進歩だけが後を追って今日に至っている。90年代は最後の打ち上げ花火が打ち上げられた時代だった。
だから手元にある70年代のLPを聴くと「ああ、なんてすごい時代だっただろう」といつも思う。思い出のある音楽のひとつひとつが、どの時期、なんというラジオ番組で聴いたものだったとか覚えているオレがいる。そして多くの中年のオジサンやオバサンもまたそのような体験をいっぱい持っている。でもそれをことさら他人に話す機会なんて普通はないだろう。みな、13歳の夏に聴いた曲や、17歳の土曜日の午後に聴いた曲の衝撃体験をひそかに抱えて、くたびれはてている。
ということで、このあまりにも有名なスティービー・ワンダーの「迷信」をここでまた聴いてみよう。
キミ、ちゃんと頭を揺らしながら聴いてるかね? ドラムはスティービー自身が叩いてるんだよ。前回R.ケリーを紹介したけど、歌いまわしとかにちゃんとこの偉人の影響が出てるのが分かるよね。プリンスなんかもそうとうにスティービーのことを尊敬してるようだよ。