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BOUNDHEAD

Back Stroke Swimmer VS a message for Mrs.July
70年代にティン・パン・アレー周辺の人脈図に登場してくるのが南佳孝。AORなんて言葉がなかったころから、もう「AOR(オトナ)な歌」ばかり歌うシンガーであった。

ちなみにAORというのはアメリカの音楽業界人が促販キャンペーンのためにひねり出した言葉だが、日本ではこれが、アダルト・オリエンテッド・ロックの略称と宣伝されるようになった。だが「オトナ志向のロック」って何だ。

AOJ(オトナ志向のジャズ)、AOB(オトナ志向のブルース)、AOE(オトナ志向の演歌)、AOF(オトナ志向のフォーク)、AOS(オトナ志向のソウル), whatever!!!

Rの箇所を別の音楽ジャンルにしてみれば、こういった表現がいかに馬鹿げたものだったか、よく分かるだろう。

AOJというジャンルが存在しないように、AORってジャンルは、本当は存在しなかったんだよ。ロックはロックでしかないし、それは8ビート音楽のバリエーションでしかなかったはずだった。だが世の中のリスナーたちの多くが「裸の王様」のような戯画に陥っていった。90年代に入ると、AORはダサいというような風潮が特に新世代の側から言われるようになった。だが創作され世間に発表される音楽において「本当に存在する違い」というのは、それが「よい作品」であるか、「取るに足りない作品」であるかということだけだ。「その違い」はジャンルに関係なく存在するということが、多くの人(特に当時の新世代)に理解できなくなっていた。そして90年代の新世代ロックの勢いも凋落して今にいたる。

だからオレは、早く、みなが「そんな言葉上の催眠術」から目覚めてくれればいいと思う。特に若い人たちにそう願う。

南佳孝の話に戻ろう。
鈴木茂のギターをバックに歌う「これで準備OK」(「忘れられた夏」所収)なんて最高だけど、ロックなのにジャズっぽく聴こえるのが南佳孝の持つ魅力だった。

だが今回オレが紹介したいのは、この1曲なのだった。「プールサイド」という曲はこの曲よりずっと人気があるみたいだけど、同じようなモチーフを扱った歌としては、オレはこの曲「Back Stroke Swimmer」(Daily News所収)の方がずっと好きだ。ということで、若い人にもこの曲のよさが分かってもらえたらうれしい。



村田和人にも、似たモチーフのある名曲があるので、「南佳孝VS村田和人」ということで紹介したい。「Mrs.Julyへの伝言」(Boy's Life」所収)これもいい味わいがある曲だよね。



といういことで「隠れた名曲」カテゴリーは、邦楽については、南佳孝、村田和人ではじめることにしましたよ。

p.s. 「ティン・パン・アレーなんて名前、自分がティーンズだったころ、聴いたことないぞ」とおっしゃる当時ティーンズだった方々。確かにそうかもしれない。でも「オールナイト・ニッポン」という深夜ラジオ番組を当時聴いていた人は、ティン・パン・アレーという名前は知らなくとも、彼らの音楽自体はちゃんと聴いてるはず。番組の合間合間でつなぎとして短く流されていた曲が実はティン・パン・アレーの曲だったのだよ。
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